たとえ家族でも、見られたくない物はあるから部屋に鍵を取り付けたい

 私は末っ子だ。しかも両親がかなり歳がいってから産んだ子なので、普通の家よりも過保護に育てられたと思っている。一番上の兄は殆ど親と言ってもいいくらい年齢が離れているので、冠婚葬祭でくらいしか会ったことがないし、一番歳の近い姉でさえ10歳以上離れているので、話が全く合わない。それにみんなとっくに家を出てしまっているので、私はほぼ一人っ子状態で育ってきた。だから両親の関心はおのずと私一人に向けられることになったのである。

 小さい頃はそれでよかったけれど、小学校高学年にもなると、そんな親の過干渉がうっとおしくなり始めた。それに両親がいつまでも私のことを小さい子扱いするのが嫌で嫌でたまらなかった。小学校の高学年まで私は母に爪を切ってもらっていたし、白状すると大人になった今でも、魚の骨は母に取ってもらっているありさまだ。

 そんな私も小学校を卒業すると反抗期を迎え、両親と必要最低限以外は全く話さなくなった。最初の頃こそ両親は必死になって私に話しかけてきたけれど、私が頑なに口を結ぶので、やがてそれも諦めたようだった。ところがある日、私が小学校の頃からつけている日記の場所がいつもと違うところにあることに気付いた。両親が盗み見しているのだ、と直感的にわかった私はすぐに両親に猛抗議した。たとえ家族でも、見られたくない物はあるから部屋に鍵を取り付けて、と。両親はしぶしぶ了承し、カギ屋さんに部屋の鍵をつけてもらった。ちゃっかりとスペアキーを隠そうとした両親からそれも奪い、私のプライバシーはついに完成したのである。

 あれからずいぶん時が経ち、私は母親となった。子供が年頃になり、今初めてあのときの両親の気持ちがすごくわかる。明日我が家に鍵屋さんが来るのだ。あのときはごめんね、と仏壇に手を合わせる毎日である。